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システム開発がとん挫した場合の対処法~システム開発の弁護士相談~

今回は、システム開発をめぐるトラブルについてお話します。




ベンダー企業が、ユーザー企業から受注したシステムを、納期までに完成させることができなかったり、システムの開発がとん挫してしまったために、ユーザー企業から「システム開発契約を解除する」という通知を受けることがあります。











このような場合、ベンダー企業としてはどのように対処すればよいのでしょうか。






まず、前提として、システムが完成する以前にユーザーが一方的におこなうシステム開発契約の解除には、次の2種類があります。






1つ目は、システム開発の遅れやとん挫の責任がベンダー企業にあることを理由とする解除です。





これは、法律上は「債務不履行解除」といいます。




この債務不履行解除が認められた場合、ベンダー企業は、ユーザー企業に対して報酬を請求できません。




すでに前払いで報酬の一部を受け取っている場合はこれを返さなければなりませんし、さらにユーザー企業からの損害賠償にも応じることになります。








2つ目は、特にベンダー企業に責任はないけれども解除するという場合です。


これは、法律上は、民法の641条に定められています。

この条文により、ユーザーは、ベンダーの仕事が完成する前であれば、いつでも、一方的に請負契約を解除することができます。


ただし、この場合、ベンダー企業には責任はありませんので、ベンダー企業はユーザー企業に対して、システムを途中まで開発したことに対する報酬を請求できます。


また、まだ開発していない部分についても、すでに支出している費用があれば、実費を請求できます。











このように、「システム開発の遅れやとん挫の責任がベンダー企業にあることを理由とした解除」であるのか、「ベンダー企業に責任はないけれども解除する」というケースかによって、事態はまったく違ってきます。

ユーザー企業としては通常は、前者の「システム開発の遅れやとん挫の責任がベンダー企業にあることを理由とした解除」を主張してきます。








これに対して、ベンダー企業としては、遅れやとん挫の責任がベンダー側にないのであれば、その点をはっきり主張していかねばなりません。




そうしなければ、すでに開発した分の開発費も請求できなくなってしまうからです。










ベンダー側から主張すべき内容としてはたとえば次のようなものが挙げられます。






① ユーザー企業で担当すべき作業(たとえば、ユーザーが保有しているデータの登録作業など)が遅れたため、開発が遅延した。


② ユーザー企業からベンダー企業に提出すべき資料の提供が遅れたため、開発が遅延した。


③ 開発するシステムの機能や仕様について、ユーザー企業内部での意思決定が遅れたため、開発が遅延した。


④ ベンダー企業からユーザー企業に対し、システム開発のための打ち合わせを求めていたが、ユーザー側の事情で打ち合わせが遅れて、開発が遅延した。











ベンダー企業としては、ユーザー企業にこれらの事情がなかったのか、自社の開発担当者や営業担当者に十分に調査すべきです。






さらに、ベンダー企業がユーザー企業に対し、①から④のようなユーザー側の事情で開発が停まっていることを指摘し、ユーザーに対して早期の対応を督促していたような事情があれば、その点も述べるべきです。


そして、この点について、証拠(ユーザー企業に対して送付した督促状など)を集めることも重要です。




それと同時に、ユーザー企業からの解除通知に対し、早期に、内容証明郵便で、「システム開発の遅れの原因はユーザー企業にある」という内容の反論をおこなっておくべきです。



この内容証明郵便には、できるかぎり具体的に、ユーザーがいつ、何をするのが遅れたことが開発の遅延につながったのか、これに対してベンダーはどのようにこの点を指摘し督促してきたのかを記載することが必要です。







そうしておくことで、ユーザー企業に自身に非があったことを認識させ、裁判をしなくてもトラブルを解決できる方向に進めることができればベストです。





内容証明郵便を弁護士から出すとさらに効果的です。



また、仮に裁判になってしまったとしても、この内容証明郵便は、裁判で重要な証拠として提出することができます。








このように、ユーザー企業に対して反論をおこなっていくのと並行して、解除通知を受けたシステム開発を続けるのか、やめるのか、決定しなければなりません。




この点については難しい判断ですが、すでに開発の最終段階まで来ているのであれば、システム開発の遅れの原因がユーザー企業にあり、解除通知が無効である点を指摘した上で、システムを完成させて納品を申し出るというやり方もありえます。




これによってベンダー企業のシステムを完成したことを主張して、ユーザー企業に対して報酬の未払い分を請求しやすくなります。








他方、システム開発をやめるのであれば、「ユーザー企業からの解除は、民法641条に基づく解除の意思表示として援用する」という内容証明郵便を送り、すでに開発した部分の報酬を請求していくべきです。





「ユーザー企業からの解除は、民法641条に基づく解除の意思表示として援用する」というのは法律用語ですが、大雑把に言うと「ベンダー側に責任があるという主張は受け入れられないが、開発をやめることについては了解する」というような意味合いです。





システム開発に関するトラブルでお困りの場合には、咲くやこの花法律事務所にご相談ください。






コラムニストプロフィール
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西川 暢春(にしかわ のぶはる)
弁護士法人咲くやこの花法律事務所

当事務所は大阪本町に所在し、主に企業経営者向けの法律サービスを業務としています。
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