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不動産の弁護士相談(大阪)~不動産売買リスクについて~

不動産売買のリスクとして土壌汚染のリスクがあります。




つまり、買主の立場からみれば、土地を買った後に土壌汚染が発覚した場合に、その汚染を除去する費用の負担を売主に請求することになりますが、これが認められるかという問題が出てきます。




土壌汚染の除去費用を売主に負担させるためには不動産売買契約の条項がポイントになります。












今回は、土地を売った後で汚染が発見された場合に備え、土地の買主として売買契約の条項をどのように定めておくべきかというお話をさせていただきます。






この点で参考になるのが東京地方裁判所で平成23年7月11日に下された判決の事案です。




この事案は、味噌や醤油の醸造・販売会社が、味噌工場の敷地を約41億円で不動産業者に売却したところ、購入の3か月後に環境基準を上回るヒ素がこの土地に含まれていることが発覚したというものです。






汚染の除去のために必要な費用は2億円近い金額となり、買主である不動産業者は、これらの費用を売主に請求する裁判を起こしました。






しかし、この請求は認められず、汚染の除去費用は結局買主である不動産業者の負担となりました。






なぜ認められなかったかというと、この土地売買の売買契約書には、次の規定がありました。

















第10条

第2項

土地汚染調査の結果、環境省の環境基準および自治体に指導基準があるときにはその基準を上回る土壌汚染があった場合は、買主は汚染の範囲およびかかる費用を売主に明示し、売主は土壌改良もしくは除去の費用を買主に支払うものとし、買主は自ら土壌改良もしくは除去をおこなうものとする。













この条文に出てくる、環境省の環境基準については、下記のURLにおいても公開されており、参照することができます。

↓ ↓ ↓ ↓ ↓

http://www.env.go.jp/kijun/











そして、この環境基準では、「汚染がもっぱら自然的原因によることが明らかであると認められる場所については、環境基準を適用しない。」と明記されています。






東京地方裁判所は、今回発見されたヒ素は温泉水などの自然的原因によるものだと判断し、そうである以上そもそも環境省の環境基準の適用外であって、契約書10条2項にある「環境省の環境基準を上回る土壌汚染があった場合」にはあたらないから、買主は売主に対して除去費用を請求することはできないと判断しました。








この事例から学ぶべきことはどういったことでしょうか?

土地の買主としては、土壌汚染の原因が自然的原因によるものかそうでないかはさておき、どちらの場合でもあっても、汚染除去費用は売主に負担してもらいたいと考えるのが通常です。






上記の判例を踏まえれば、そのためには、不動産の買主としては「もともと自然にあった汚染についても、売主は汚染の除去費用を負担する義務を負う」ということを契約書で明確にしておくべきです。






そうでなければ、購入した不動産について土壌汚染が発覚した場合も、その原因が自然的原因によるものであると判断されてしまうと、汚染の除去費用を売主に請求できないことになってしまいますので注意が必要です。






土壌汚染の除去費用は高額になることが多く、トラブルも増えていますので、リスクを踏まえた契約書の作成をお勧めします。







不動産売買契約書の条項を定めるに当たってお困りのことがある場合は、ぜひ咲くやこの花法律事務所にご相談ください。


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労働問題の弁護士相談(大阪)~無断欠勤の従業員への対応~ 

従業員が無断欠勤を続け困惑しているというご相談を受けることがときどきあります。


無断欠勤をする従業員に対してどのような対応をすればよいのでしょうか。

事情にもよりますが、いまの時代、従業員が欠勤することを会社に連絡すらできないというシチュエーションはほとんど考えられません。

会社に無断で欠勤するような不誠実な従業員には早く会社を去ってもらうことがベストであることが多いでしょう。






判例上も無断出勤が7日以上続けば解雇できるのが原則です。

ただし、従業員が精神的な病気を抱えていると思われるケースではそのような対応が不当解雇とされたケースもあります。

今回は、会社が無断欠勤として従業員を解雇したことが不当解雇にあたるとされた、平成24年4月27日の最高裁の判決の事例についてお話したいと思います。

この事件は、日本ヒューレッド・パッカードが無断欠勤を理由に従業員を解雇したのに対し、従業員が不当解雇であるとして会社を訴えた事件です。

解雇に至った事情はおおまかにいうと次のようなものです。

日本ヒューレッド・パッカードの従業員が、職場の同僚から嫌がらせを受けているなどとして、有給休暇を使って会社を休みだしました。


会社としては、従業員の訴えを聴き、また他の従業員に対する聴き取りをおこなうなどして、従業員の言うような同僚からの嫌がらせがあったのかどうか、調査しましたが、嫌がらせの事実はないという結論に達しました。
従業員の訴えの内容からも、嫌がらせの事実はなく、従業員がメンタル面での不調で被害妄想に陥っていることがうかがわれるケースでした。





このような被害妄想はうつ病などの典型症状です。





そして、欠勤が40日近くになった頃、会社が欠勤している従業員に対し出勤を命じるメールを送ったところ、この従業員は間もなく出勤するようになりましたが、会社は従業員が正当な理由なく40日以上も欠勤したことは無断欠勤にあたるとして、従業員を諭旨(ゆし)退職の懲戒処分としました。

諭旨退職の懲戒処分というのは、労働者が退職願等を自主的に出して退職することを認める一方、所定期間内に退職願等を提出しなければ懲戒解雇するというもので、懲戒解雇より少し軽い懲戒処分です。





この会社の就業規則には、次の規定がありました。

「会社は、社員が、欠勤多くして不真面目なとき、及び正当な理由なしに無断欠勤引き続き14日以上に及ぶときには、懲戒処分にする。」

会社は、この就業規則の規定に基づいて、長期間欠勤していた従業員を諭旨退職の懲戒処分としたのです。

しかし、従業員が、諭旨退職の懲戒処分は無効であると主張して会社に対して裁判を起こしました。

そして、裁判は最高裁判所まで争われ、最高裁判所は、従業員の主張どおり、諭旨解雇の懲戒処分は無効であると判断しました。
最高裁が諭旨退職の懲戒処分を無効とした理由は、次のとおりです。









1 従業員が同僚から嫌がらせを受けているといって会社に出勤してこないのは、被害妄想などの精神の不調があったためであると考えられる。


2 会社としては、諭旨退職の懲戒処分とする前に、従業員に精神科医による健康診断をうけさせたうえで、精神の不調により仕事ができないという診断結果であれば休職を命じるなどの対策を講じるべきであった。


3 このように健康診断を受けさせることも休職を命じることもなく、欠勤が長引いているだけで直ちに諭旨退職とした会社の処分は適切ではなく、無効である。










この事件では、従業員は会社に「同僚から嫌がらせを受けている」と言っていただけで、「精神的にまいっている」、「うつ病かもしれない」などと言っていたわけではありません。

しかしその場合でも、裁判所は、休職を命じることなく、無断欠勤と扱って解雇した会社の処分を無効としているのです。





この判例から、従業員が長期にわたって欠勤している場合であっても、精神的な不調が影響していることが疑われる場合は、無断欠勤として対応するのではなく、休職を命じることが必要です。このことは、従業員自身が病気であることを否定する場合も同じです。
精神的な不調で問題行動が出ている場合や欠勤が続く場合は、そのこと自体を問題にするのではなく、休職してもらって療養を促すことをまずしなければなりません。



そして、就業規則で定めている休職期間が満了した時点で、従業員が精神科などに通院していれば従業員の主治医に、従業員が特に病院に通院などしていなければ、会社の顧問医に、従業員の復職の可否について意見を聴き、復職の可否を判断するのが正しい手順です。





従業員の不調に配慮した思いやりのある誠実な対応が必要ですし、裁判所もこの点をみています。





従業員の問題でお困りの方は、咲くやこの花法律事務所にご相談ください。

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不動産の弁護士相談(大阪)~定期借家契約の説明義務について~

今回は、定期借家契約を結ぶに当たって、貸主が借主に行わなければならない説明についてのお話をさせていただきます。



そもそも、「定期借家契約」というのは要するに

借家期間が定められていて、その期間が経過すると、借家契約が更新されることなく終了する契約

のことです。





逆に言えば、契約書のなかで借家期間を定めているだけでは、借家期間の経過によって借家契約が終了することとはなりません。



借家期間を限定したいのであれば、必ず、借家契約を「定期借家契約」としておかなければならないのです。



建物の貸主と借主との関係について定めているのは、「借地借家法」という法律です。



この借地借家法は、借主側に非常に有利にできている法律です。





貸主と借主との間の賃貸借契約書で、単に借家期間を決めていただけでは、借家期間が経過したからといって借家契約を終了させることは非常に難しいです。







例えば、賃貸借契約書において、

第○条 借家期間は2年間とする。

と定められていたとしても、借家期間が経過する1年前から半年前までの間に、つまり賃貸借契約を結んでから1年後から1年半後までの間に、貸主から借主に対して「借家契約の更新はしません」という通知を送らない限り、借家契約は自働的に更新されることとなってしまうのです。



しかも、貸主から借主に「借家契約の更新はしません」という通知を送って借家契約が更新されないこととなるのは、貸主が借家契約の更新を拒絶する「正当な理由」がある場合だけなのです。



この、貸主が借家契約の更新を拒絶する「正当な理由」があるかどうかは、借主がきちんと期日までに家賃を支払っているかどうかなど、借主側の態様の良し悪しや、貸主側が自分でその家に住まなければならないなどの貸主側が建物を必要としている事情、貸主が借主に払うと言っている立退き料の額などを総合して判断されます。





ただ、一般的にいって、貸主が借家契約の更新を拒絶する「正当な理由」があると認められるためのハードルは、とても高いものといえます。



しかも、たとえ貸主が借家契約の更新を拒絶する「正当な理由」があると認められ、借家契約が更新されないこととなったとしても、貸主は借主に対して高額な立退き料を支払わなければならないこととなります。



このように、単に賃貸借契約書で「借家期間は2年間とする」と定めていても、借家契約を2年間で終わらせることは非常に難しいですし、たとえ終わらせることができても、高額な立退き料を支払うことが必要になります。



このため、「定期借家契約」があるのです。



借主との借家契約を定期借家契約としておけば、「借家契約の更新はしません」という通知を送らなくても、借家期間が経過すれば借家契約は当然に終了することになりますし、借主に立退き料を支払う必要もありません。



借家契約を定期借家契約とするために必要なことは、次の(1)と(2)の2つです。



(1)賃貸借契約書で、借家期間を定めておくだけではなく、借家契約が更新されないことも定めておく。

例えば、賃貸借契約書に次のような条項を入れておくことになります。

第○条 第1項 借家期間は2年間とする。 第2項 前項の期間の経過により、本借家契約は当然に終了し、終了後は更新されることはない。





(2)借家契約を結ぶのに先立って、貸主から借主に対し、「借家契約が借家期間の経過で当然に終了し、その後更新されることはない」ということを、書面を交付して説明する。



最高裁判所で平成22年7月16日に下された判決によって、この書面は、契約書とは別の書面を交付することが必要とされています。

ここで、貸主から借主に対して、どの程度の説明をおこなえばよいのか、ということが問題となります。

東京地方裁判所で平成24年3月23日に下された判決が、この点について判断をおこなっています。

この東京地方裁判所の判決の事件では、貸主は、

・この借家契約が、借地借家法で定められている定期借家契約であること

・借地借家法に基づく契約の更新はないこと

が記載された契約書とは別の書面を借主に渡して、借主の目の前で読み上げました。



しかし、裁判所は、これでは貸主が借主におこなうべき説明としては不十分であるとして、結局この借家契約は更新のない定期借家契約とは認められませんでした。

裁判所は、貸主が借主に行うべき説明として、

これから結ぶ借家契約が、一般的な借家契約とは異なる定期借家契約であること

これは、借家契約の更新を拒絶する「正当な理由」がなくても、借家契約が更新されないこと

その結果、借家期間の経過によって確定的に借家契約が終了することを、借主が理解できるような説明をおこなうことが必要である

としました。





この東京地方裁判所の判決の内容からすると、次のような説明をおこなっておけば、借家契約を定期借家契約とするために貸主が借主に対しておこなわなければならない説明として十分であると考えられます。





①  一般的な借家契約では、例え借家期間を定めたとしても、その期間の経過によって当然に借家契約が終了するわけではなく、貸主が借家契約の更新を拒絶する「正当な理由」がない限り、借家契約は自働的に更新される。







② この貸主が借家契約の更新を拒絶する「正当な理由」があるかどうかは、借主がきちんと期日までに家賃を支払っているかどうかなど、借主側の態様の良し悪しや、貸主側が自分でその家に住まなければならないなどの貸主側が建物を必要としている事情、貸主が借主に払うと言っている立退き料の額などを総合的して判断される。







③ これに対して、今から締結する借家契約は「定期借家契約」という一般的な借家契約とは異なるものである。

 「定期借家契約」では、借家期間が経過することで、借家契約は当然に終了する。貸主が借家契約の更新に同意しない限り、借家契約は更新されない。







これだけの内容を契約書とは別の書面に記載して、借主にわたし、その書面にしたがって説明をおこなえば、借家契約を定期借家契約とするために貸主が借主に対しておこなわなければならない説明として十分であると考えられます。



この説明をおこなうことではじめて、借家契約を、更新のない「定期借家契約」とすることができるのです。



土地・建物の賃貸借契約の更新に当たって、借主との間でトラブルとなりお困りの方は咲くやこの花法律事務所にご相談ください。

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会社経営の弁護士相談(大阪)~休職期間の定め方について~

今回は、就業規則において、従業員の休職期間をどのように定めればよいのか、ということについてお話させていただきます。






就業規則を作る際によく参考とされる、厚生労働省のモデル就業規則には、休職期間について次のような定め方がされています。











第9条 従業員が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職とする。


① 業務外の傷病による欠勤が○か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき ○年以内


② 前号のほか、特別な事情があり休職させることが適当と認められるとき 必要な期間


2 休職期間中に休職事由が消滅したときは、原則として元の職務に復帰させる。ただし、元の職務に復帰させることが困難又は不適当な場合には、他の職務に就かせることがある。


3 第1項第1号により休職し、休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする。






しかし、このモデル規定には経営者の立場から見た場合、


① 会社側から休職を命じることができることが明確になっていないことや、


② 会社が従業員の主治医に面会できることを定めていないこと、


③ 休職期間が長すぎることなど、





いろいろと問題があります。








今回は、このうち③の休職期間の点についてお話したいと思います。




厚生労働省のモデル就業規則に、休職期間について「○年以内」という定め方がしてあるために、休職期間を年単位で設定してしまう経営者の方が多いです。







しかし、実は、法律上、「会社は、病気休暇を、最低○年としなければならない」といったルールがあるわけではありません。








休職期間をどれだけの期間とするかは、会社の自由です。




そして、病気休職中の従業員に対しては、給料を支払う必要はありませんが、社会保険料の会社負担分は会社が負担することになります。






これを何年も負担しなければならないとなると、会社の負担は非常に大きなものとなってしまいます。








実際にも復職できるかわからないケースの場合、何年も社会保険料を負担させられるのはたまらないというのが経営者の方の本音ではないでしょうか。








また、うつ病で休職した従業員が休職期間が満了する前に復職し、復職後に問題行動が出たため解雇した事例で、休職期間がまだ残っていたことを1つの理由に不当解雇であると判断した事例もあります(カンドー事件)。






就業規則で休業期間を何年にもわたる長いものとして規定してしまっている場合には、復職した段階でまだ休職期間が残っている場合が多くなり、復職後の解雇が不当解雇と判断されやすくなってしまうということです。







これらの観点から、就業規則には、現実に会社として社会保険料を負担することができる期間を十分検討した上で休職期間を決めておくことをお勧めします。





たとえば、従業員の勤続年数に応じて、3カ月から6カ月の程度の期間を定めるのもよいと思います。

具体的には、就業規則に、次のような規定を設けておくことになります。







第○条(休職)


第○項
休職期間は、次のとおり、勤続年数により異なるものとし、会社の裁量により延長することができる。




勤続3年未満    3カ月
勤続10年未満   4ヶ月
勤続10年以上   6カ月











就業規則で休業期間を定めるときには、何年にもわたる長期の休業期間を定めるのではなく、会社として社会保険料を負担することができる現実的な期間を定めておくべきです。







休職については、会社に対象者がいないときは現実的な問題として認識しにくいため、就業規則にもりこむときもあまりよく考えずにひな型どおりに入れてしまいがちです。







しかし、現在は、メンタルヘルスの問題などで休職を希望する従業員が増えています。休職の問題は会社経営をしていれば必ず出くわす問題と言えます。







そして、現実に休職の問題が発生して、就業規則の規定の意味を初めて考えることになり、「この規定はまずかったなあ」と後悔するケースが多いです。





そのようなことにならないためにも、就業規則の作成にあたっては、必ず弁護士に相談されることをお勧めします。








咲くやこの花法律事務所では、経営者の方々の立場に立って会社を守るための就業規則のアドバイスを行っています。


就業規則の定め方や改正の仕方についてお困りの経営者の方は、咲くやこの花法律事務所にご相談ください。




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入社希望者の精神疾患の既往症について採用時に尋ねることの問題点~労働問題の弁護士相談大阪~

うつ病などの精神疾患が原因となって、従業員が休職したり、退職したり、あるいは社内で問題行動を起こしたりということについて、会社経営者の方や人事部の方からのご相談が増えています。






中には、そういった精神疾患が入社以前からあり、会社がそのことを知らないままその従業員を雇い入れていたことが後になって判明するケースも多くあります。




今回のブログでは、入社希望者の面接をするときに、これまでうつ病などの精神疾患にかかったことがないかを尋ねることができるかという点についてお話しさせていただきます。








まず、結論から言えば、入社希望者の面接時に、入社希望者自身に精神疾患の既往歴(病歴に関する情報のことを既往歴と呼んでいます)を尋ねること自体はできます。


一旦雇い入れた従業員を解雇するには、会社側に非常に厳しい要件が課される反面、「どのような従業員を雇い入れるか」ということについては、最高裁判所の判例上も、会社に大きな裁量が認められています。






そのため、会社は、入社希望者がどんな人か知るために、入社希望者自身にその人についての情報を聞くことは、基本的には許されます。






そして、過去に精神疾患等があるのであれば、会社側としても、再発の危険を考え、心理的な負荷が大きい業務を避けたり、残業時間を短縮するなどの配慮が必要になりますので、会社も既往歴に関する情報を知っておく必要があります。






これらのことからすれば、採用面接時に、「あなたはうつ病などの精神疾患にり患したことがありますか?」と尋ねること自体は、許されると考えられます。








では、どのような方法で尋ねればいいのでしょうか?




口頭で確認するだけでも十分意味はあると思いますが、できればヒアリングシートを作成し、応募者に記入してもらう方法がお勧めです。




弊事務所がお勧めしているヒアリングシートでは、精神疾患の有無だけでなく、労災で問題になりやすい脳、心臓、血圧関連の異常を指摘されたことがないかどうか、前職での病気による欠勤日数がどのくらいあったかなどを記載してもらう内容にしています。





そして、最後に「もし、採用された場合、就業にあたり、健康面で特別の配慮が必要ですか?」とお聞きする内容にしております。








また、個人情報保護法の観点からは、ヒアリングシートの内容を採否の判断の一資料として用いる場合があること、採用後の人材活用の資料として用いることがあること、それ以外の用途に用いることはないことを入社希望者に対して明確にしておくことが必要です。







ただ、精神疾患への既往歴が非常にセンシティブな個人情報であることは間違いないですので、口頭で尋ねる場合でも、書面で尋ねる場合でも、「回答はあくまで任意であって、答えたくなければ答えなくてもよい。」ということを事前に伝えておくべきでしょう。






また、このようにして入社希望者から既往歴についての情報を得た場合、その情報は必要最小限の範囲の担当者のみが把握するようにし、外に漏れ出すようなことがないように十分配慮しなければなりません。







精神疾患の既往症についての情報は、個人情報のなかでも特にセンシティブな情報であり、万が一情報を漏らしてしまった場合には、大きなトラブルが予想されるからです。






具体的には以下のような点に注意すべきです。









① 精神疾患の既往歴情報の管理責任者を決める。



② 既往歴についての記録や書類は鍵のかかる保管庫に入れ、必要最小限の範囲の人事担当者等以外は閲覧できないようにする。





③ 記録や書類は所定の場所外への持ち出しを禁止する。




④ 既往歴情報の入ったパソコンは外部に持ちださない。



⑤ 既往歴情報の入ったデータへのアクセスにパスワードを設定し、必要最小限の範囲の人事担当者等以外は閲覧できないようにする。




⑥ 精神疾患の既往歴情報が印刷された文書をプリンタに放置しない。


⑦ 精神疾患の既往歴情報が印刷された文書のうち使用済みのものは再利用せずシュレッダーで廃棄する。











このように、入社希望者の精神疾患への既往歴情報については、人事担当者などの必要最小限度の人員のみが接するようにし、情報を必要としない他の従業員の目に触れないようにしておくべきです。







従業員の採用やメンタルヘルスの問題でお困りの方は咲くやこの花法律事務所にご相談ください。






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従業員の健康状態の把握~労働問題の弁護士相談~

当事務所のブログ( http://kigyobengo.com/blog/135 )で、「事業者は健康診断で、従業員の健康状態、特に脳や心臓の異常の有無を把握しておかなければならない」というお話をさせていただきました。






これは、まず第一に会社にとって大切な従業員の健康を守るために必要なことですが、従業員が不幸にも突然死するようなことがあった場合に会社が多額の損害賠償責任を負担しないためにも重要なことです。




従業員が突然亡くなった場合、本来それは会社の業務となにか関係があったかどうかはわかりません。






しかし、裁判所では、特に月に60時間以上の長時間労働をしていた従業員が、脳や心臓の疾患で突然亡くなった場合、それは会社の業務が原因だと認める傾向が強くあります。




実際にも、突然死について会社の責任を認め、数千万円単位の賠償を会社に負担させた判決が数多くあります。




 従業員の健康状態を会社が把握することは、このような問題を防ぐ第一歩として重要なことです。




ただ、「会社が従業員の健康状態を把握しなければならないといっても具体的にどうすればよいのか」という疑問をよくお聞きします。








そこで、今回は、この点についてお話しさせていただきます。


まず、前提として、会社は、1年に1回は従業員に健康診断を受けさせる義務を負っています。


このことは、労働安全衛生法という法律の第66条に定められています。


この健康診断は、会社が従業員の健康状態を知り、それを踏まえて従業員の仕事の内容が過重すぎないかどうかなど、を検討するためのものです。
そのため、会社は各従業員の健康診断結果を従業員の同意がなくても取得することができます。




よく、「健康診断の結果を会社に提出させることはプライバシーの観点から抵抗がある」という声も聞きます。




しかし、労働安全衛生法には、「事業者は、健康診断の結果を記録しておかなければならない。」と明記されています(66条の3)。




このように、従業員の健康状態を把握しておくことは会社の義務ですので、健康診断の結果は必ず会社が取得しておくべきです。




健康診断の結果を提出することをいやがる従業員がいる場合は、会社として従業員の健康状態を把握しておかなければならないことを説明して、説得していかなければなりません。




それでは、会社の年に1回の健康診断の結果、「精密検査が必要」となった場合には、会社として、どうすればよいのでしょうか?









これについてはポイントが3つあります。








まず、最初に、もし従業員が健康診断の結果を知らない場合は従業員に知らせなければなりません。





次に、会社は、精密検査が必要とされた従業員に関して、どのような措置を会社がとるべきか、医師の意見を聞かなければなりません。





労働安全衛生法には、「事業者は、健康診断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る。)に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師又は歯科医師の意見を聴かなければならない。」と定められています(66条の4)。





そして、3番目に、医師の意見を聞いた結果、必要な時には、勤務時間を短縮したり、作業内容を変更するなどの措置をとらなければなりません。




特に、残業が月60時間を超えているようなケースでは、まず残業を減らすことを検討しなければなりません。












この点について、東京高等裁判所で平成11年7月28日に出された判決が参考になります。




この事件は、コンピュータソフトウェア会社に勤務していた当時33歳の従業員(システムエンジニア)が、ある日突然自宅で倒れ、その日のうちに脳幹部出血により亡くなったというものです。




この従業員は自宅で倒れたのですが、遺族は死亡の原因が過労にあるとして、会社に対し損害賠償の請求をおこないました。





これに対し、裁判所は遺族の主張を認め、これは過労死であるとして、会社に対し3200万円の賠償金を遺族に支払うように命じました。









この脳幹部出血というのは高血圧が原因です。そして、この従業員は入社の時点ですでに高血圧の診断が出ていました。
ですので、会社側は、「この従業員がなくなったのは、持病であった高血圧が原因で、会社の業務とは関係がない」と裁判上主張しています。




それにもかかわらず、裁判所が過労死であるとしたのはどうしてでしょうか?









一番の原因はこの従業員の残業時間の多さになります。






この従業員は、1カ月あたりの残業が100時間を超える長時間労働になっていました。こういったケースで、不幸にも突然死が起こると、裁判所はかなりの確率で過労死だと判断する傾向にあります。
1カ月当たりの残業時間が平均して60時間を超えてくるようだと要注意です。









さらに、裁判所は会社の対応の問題点についても指摘しています。









会社はきちんと定期健康診断を行っており、会社の定期健康診断で高血圧が
発見されたため、会社は従業員に対して精密検査を受けるように指示していました。




しかし、裁判所は、そのような指示をしただけで、この従業員の業務を軽減する措置をとらなかったことを指摘しています。





裁判所は、「高血圧が要治療状態に至っていることが明らかな労働者」については、会社は、「健康な労働者よりも就業内容及び時間が加重であり、かつ、高血圧を増悪させ、脳出血等の致命的な合併症を発症させる可能性のあるような精神的及び肉体的負担を伴う業務に就かせてはならない義務を負う」としています。





これはわかりにくいですが、要するに、会社がこの従業員の残業時間を減らす措置をとらなかったことが問題とされています。










この判決からもわかるように、定期健康診断の結果異常が発見された従業員に対して、その後のことを従業員の自己責任にまかせているようでは、万一の場合に会社として多額の損害賠償責任を負担することになってしまいます。





会社は単に、精密検査を受けるように指示するだけでは足りず、みすから積極的に、医師の意見を聞かなければなりません。






これは「聞いたほうがよい」というのはではなく、「聞かなければならない」という法律上の義務です。






では、「精密検査が必要」となった場合に、どの医師の意見を聞けばいいのでしょうか。









会社に産業医がいる場合には、産業医の意見を聞くことができます。しかし、実際には産業医がいない会社がほとんどです。





産業医がいない場合、「地域産業保健センター」を利用するのがお勧めです。
このセンターは、産業医がいない会社のために、産業医がおこなうような従業員に対する面談・指導といったサービスを無料でおこなっています。従業員と一緒に相談してみるのがよいでしょう。








大阪府地域産業保健センター
http://www.sanpo-center.jp/














このように、健康診断の結果、異常が発見された従業員については、会社として十分な配慮をしなければなりません。




そうでなければ、万が一、従業員の症状が重大なものとなってしまったり、死亡してしまった場合に、会社は多額の賠償義務を負担してしまうことになります。






健康診断の結果異常が発見されてしまった従業員への対処に関してお困りの方は咲くやこの花法律事務所にご相談ください。



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システム開発がとん挫した場合の対処法~システム開発の弁護士相談~

今回は、システム開発をめぐるトラブルについてお話します。




ベンダー企業が、ユーザー企業から受注したシステムを、納期までに完成させることができなかったり、システムの開発がとん挫してしまったために、ユーザー企業から「システム開発契約を解除する」という通知を受けることがあります。











このような場合、ベンダー企業としてはどのように対処すればよいのでしょうか。






まず、前提として、システムが完成する以前にユーザーが一方的におこなうシステム開発契約の解除には、次の2種類があります。






1つ目は、システム開発の遅れやとん挫の責任がベンダー企業にあることを理由とする解除です。





これは、法律上は「債務不履行解除」といいます。




この債務不履行解除が認められた場合、ベンダー企業は、ユーザー企業に対して報酬を請求できません。




すでに前払いで報酬の一部を受け取っている場合はこれを返さなければなりませんし、さらにユーザー企業からの損害賠償にも応じることになります。








2つ目は、特にベンダー企業に責任はないけれども解除するという場合です。


これは、法律上は、民法の641条に定められています。

この条文により、ユーザーは、ベンダーの仕事が完成する前であれば、いつでも、一方的に請負契約を解除することができます。


ただし、この場合、ベンダー企業には責任はありませんので、ベンダー企業はユーザー企業に対して、システムを途中まで開発したことに対する報酬を請求できます。


また、まだ開発していない部分についても、すでに支出している費用があれば、実費を請求できます。











このように、「システム開発の遅れやとん挫の責任がベンダー企業にあることを理由とした解除」であるのか、「ベンダー企業に責任はないけれども解除する」というケースかによって、事態はまったく違ってきます。

ユーザー企業としては通常は、前者の「システム開発の遅れやとん挫の責任がベンダー企業にあることを理由とした解除」を主張してきます。








これに対して、ベンダー企業としては、遅れやとん挫の責任がベンダー側にないのであれば、その点をはっきり主張していかねばなりません。




そうしなければ、すでに開発した分の開発費も請求できなくなってしまうからです。










ベンダー側から主張すべき内容としてはたとえば次のようなものが挙げられます。






① ユーザー企業で担当すべき作業(たとえば、ユーザーが保有しているデータの登録作業など)が遅れたため、開発が遅延した。


② ユーザー企業からベンダー企業に提出すべき資料の提供が遅れたため、開発が遅延した。


③ 開発するシステムの機能や仕様について、ユーザー企業内部での意思決定が遅れたため、開発が遅延した。


④ ベンダー企業からユーザー企業に対し、システム開発のための打ち合わせを求めていたが、ユーザー側の事情で打ち合わせが遅れて、開発が遅延した。











ベンダー企業としては、ユーザー企業にこれらの事情がなかったのか、自社の開発担当者や営業担当者に十分に調査すべきです。






さらに、ベンダー企業がユーザー企業に対し、①から④のようなユーザー側の事情で開発が停まっていることを指摘し、ユーザーに対して早期の対応を督促していたような事情があれば、その点も述べるべきです。


そして、この点について、証拠(ユーザー企業に対して送付した督促状など)を集めることも重要です。




それと同時に、ユーザー企業からの解除通知に対し、早期に、内容証明郵便で、「システム開発の遅れの原因はユーザー企業にある」という内容の反論をおこなっておくべきです。



この内容証明郵便には、できるかぎり具体的に、ユーザーがいつ、何をするのが遅れたことが開発の遅延につながったのか、これに対してベンダーはどのようにこの点を指摘し督促してきたのかを記載することが必要です。







そうしておくことで、ユーザー企業に自身に非があったことを認識させ、裁判をしなくてもトラブルを解決できる方向に進めることができればベストです。





内容証明郵便を弁護士から出すとさらに効果的です。



また、仮に裁判になってしまったとしても、この内容証明郵便は、裁判で重要な証拠として提出することができます。








このように、ユーザー企業に対して反論をおこなっていくのと並行して、解除通知を受けたシステム開発を続けるのか、やめるのか、決定しなければなりません。




この点については難しい判断ですが、すでに開発の最終段階まで来ているのであれば、システム開発の遅れの原因がユーザー企業にあり、解除通知が無効である点を指摘した上で、システムを完成させて納品を申し出るというやり方もありえます。




これによってベンダー企業のシステムを完成したことを主張して、ユーザー企業に対して報酬の未払い分を請求しやすくなります。








他方、システム開発をやめるのであれば、「ユーザー企業からの解除は、民法641条に基づく解除の意思表示として援用する」という内容証明郵便を送り、すでに開発した部分の報酬を請求していくべきです。





「ユーザー企業からの解除は、民法641条に基づく解除の意思表示として援用する」というのは法律用語ですが、大雑把に言うと「ベンダー側に責任があるという主張は受け入れられないが、開発をやめることについては了解する」というような意味合いです。





システム開発に関するトラブルでお困りの場合には、咲くやこの花法律事務所にご相談ください。






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フランチャイズ契約と名板貸責任について

近年、コンビニエンスストアやファストフード店、その他さまざまな分野において、フランチャイズ事業が盛んにおこなわれています。
フランチャイズ事業は、店舗網を急拡大することができる可能性が魅力ですが、一方で、法的なトラブルになりやすい事業の1つでもあります。



フランチャイズビジネスを始める場合は、注意しなければならない法的なリスクがたくさんありますので、経験のある弁護士に継続的に相談することが必要不可欠です。

今回はフランチャイズビジネスを始めるにあたって注意しなければならない「名板貸責任」についてお話します。


「名板貸責任」とは、簡単に言うと、「商号」、つまり会社であれば会社の名前をつかって取引することを、他人に認めた事業者は、その他人がした取引について責任をもたなければならないということです。




商法の14条にその規定があります。

商号、すなわち会社の名前を信用して取引をおこなった取引相手を保護するための条文です。
フランチャイズ事業の場合にも、この「名板貸責任」に注意しなければなりません。



つまり、フランチャイズ事業で使う店名を本部事業者の会社の名前としてしまうと、本部事業者は加盟店の行った取引について責任をもたなければならない場合が出てきます。





「チェロキー中古車売買契約事件」と呼ばれる、神戸地方裁判所の尼崎支部で平成13年11月30日に下された判決の事件でも、本部事業者の会社名をフランチャイズチェーンの名前とした事例です。

本部事業者は、自社の社名を、加盟店が経営する店舗の店名として使うことを認めていたことから、加盟店が行った取引について本部事業者が責任を負うことになってしまいました。

この事件では、本部事業者の商号、すなわち会社名は「ユーポス株式会社」でした。これに対して、加盟店の名前は、「ユーポス尼崎店」でした。

加盟店であるユーポス尼崎店は、顧客から自動車を買い取って、その自動車の代金を顧客の代わりにクレジット会社に返済する義務を負っていたのですが、資金が行き詰まり、自動車の代金をクレジット会社に返済できなくなりました。

このことから、顧客が、加盟店であるユーポス尼崎店だけでなく、本部事業者であるユーポス株式会社に対しても、支払った手数料と自動車の代金の返済を求めて裁判を起こました。

そして、本部事業者であるユーポス株式会社は取引にまったくかかわっていないにもかかわらず、ユーポス株式会社も顧客に対してユーポス尼崎店が受け取った手数料と自動車の代金を支払わなければならないという判決が下されました。







この事件で、フランチャイズの本部事業者であるユーポス株式会社が、自分がまったくかかわっていない取引の責任を負うこととなったのは、ユーポス株式会社が、フランチャイズの加盟店に対して、「ユーポス」という会社の名前を使うことを許していたからです。





フランチャイズチェーンの加盟店の使用する名前が、「ユーポス」という会社の名前ではなく、別の名前であったならば、本部事業者であるユーポス株式会社は商法14条の名板貸責任を負いませんでした。

すなわち、加盟店であるユーポス尼崎店のおこなった取引について責任を負うことはなかったのです。





このように、本部事業者としてフランチャイズ事業を営む場合には、会社の名前をフランチャイズの加盟店の使う名前としてしまいますと、加盟店の行った取引について責任を負わされることになりかねません。

フランチャイズの加盟店には、本部事業者である会社の名前とは別の名前を使ってもらうべきです。



たとえば、株式会社すかいらーくは、以前は「すかいらーく」というレストランチェーンを展開していましたが、いまは「ガスト」という店名を使い、「すかいらーく」という店舗はなくなりました。このように、会社名をフランチャイズチェーンにしないことは法的にもメリットがあることです。


ただ、そうは言っても、本部事業者の会社名の知名度が高いなどの事情で、どうしても本部事業者の社名をフランチャイズチェーンの名称にしたいという場合もあると思います。




そのような場合には、加盟店と取引をする顧客が、

「加盟店は、本部事業者と同じ名前を使ってはいるが、本部事業者とは別の、独立した事業者なのだな」


ということがわかるような工夫をしておくことをお勧めします。






この点で参考になるのが、「赤帽事件」と呼ばれている、東京地方裁判所で平成2年3月28日に下された判決です。

「赤帽」は軽貨物運送事業のフランチャイズチェーンです。

この「赤帽」で、加盟店が運送中に顧客の荷物をこわしてしまいました。

本部事業者の名前もやはり「赤帽」(正確には「全国赤帽軽自動車運送協同組合連合会」)でした。

そのため、荷物をこわされた顧客は、本部事業者に対して、商法14条の名板貸責任に基づいて、荷物がこわしたことの損害賠償を求める裁判を起こしました。

ところが、この事件では、先の「ユーポス」事件とは異なり、本部事業者は加盟店が顧客の荷物をこわしたことについては責任を負わないという判決が下されました。





その理由は、次のようなものです。



① フランチャイズの加盟店の商号が、「赤帽○○運輸」、「赤帽○○運送」というように、加盟店の固有名詞がつけられたものになっていたこと

② 加盟店が使用する運送車両には、両側の扉に加盟店の個人商号および電話番号が記載されていたこと

③ 加盟店が発行する運賃請求書と領収書にも、加盟店の個人商号や住所等が記載されていたこと

④ 職業別電話帳でも、本部事業者の広告とは別に、加盟店の個人商号での広告が多数存在していたこと


⑤ 新聞広告や利用者向けのパンフレットにも、赤帽車による営業が加盟店の個人の営業である旨の記載があったこと




判決はこのような理由を挙げて、本部事業者の名称と同じ名前のフランチャイズチェーンでも、本部事業者は名板貸責任を負わないと判断しました。





なぜ、このような判断になったのでしょうか?

先にお話したように、商法14条の名板貸責任の条文は、そもそも名前を信用して取引を行った取引相手を保護するために設けられたものです。

ですので、「赤帽事件」のように、「加盟店は本部事業者からは独立した別事業者なのだな」ということが顧客からみてわかるようになっていれば、本部事業者は名板貸責任を負わないのです。

すなわち、加盟店が行った取引についての責任を負わないのです。



このように、会社の名前をフランチャイズの加盟店に使用してもらってフランチャイズ事業を行う場合には、顧客からみて、加盟店が本部事業者とは別の事業者であることがわかるような工夫をしておくことが必要です。






フランチャイズ事業を行うにあたっての法的リスクなどについて不安のある事業者の方は、咲くやこの花法律事務所にご相談ください。

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能力不足の従業員を退職させる際に注意する3つのポイント③-不当解雇の訴えに負けない会社を作る

こんにちは

  咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。



以前に、不当解雇の訴えに負けない会社を作るために

「能力不足の社員を退職させる際に注意する3つのポイント」

の2つのポイントのうち、



「退職願をとりつけること」


「能力不足について証拠を残す」



ことが大事なポイントですとお話しました。




今回は最後の3つめ目のポイントについてお話します。



解雇する前に

「別の仕事を担当させる」

ということが重要なポイントになります。





裁判所で解雇が正当と認められるためには、
会社として別の仕事を与えるあるいは配置転換をするなどして、

「本人の能力に見合う仕事を与え雇用を維持しようと努力した。
しかし、それでもダメだったのでやむなく解雇した」

という実績が必要です。





「そこまでしなきゃいけないのか」

と思われる経営者の方もおられると思いますが、
そこまでしないと裁判所は企業側の声に耳を傾けてくれません。



別の仕事を担当させる、
あるいは配置転換をするときのポイントは、



問題の社員に対して、

「今回別の仕事に移ってもらうのは、あなたが現在の職務を十分にこなせてないからですよ」


というメッセージを明確に伝えることです。


経営者や管理職の立場からすれば、
能力不足などということは
なかなか面と向かっていいにくいことかもしれません。



しかし
これを明確に言っておかないと、問題の従業員の立場からすれば、

「いままで特に問題点をしてきされていなかったのに、
ある日突然呼び出されて能力不足だと言って解雇された」

ということになります。




このような場合、裁判所は絶対に解雇を正当とは認めません。



別の仕事を担当させる、あるいは配置転換をすることを決めたら、
能力不足の社員と面談をもち、
その場で、異動の原因は能力不足にあることを明確に伝えて下さい。




そして、伝えた内容を記録に残すことが必要です。



このような明確な警告をしながら、
能力不足の社員を配置転換し、
別の仕事を担当させた実績を作り、

それでも能力不足だと言う場合に
裁判所はようやく解雇が正当だと認めてくれるのです。

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労働審判の申立書が届いたら絶対に注意しなければならない2つのこと(2)

こんにちは
咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。


前回は、労働審判の申立書が届いたら、

「すぐに弁護士に相談してください」

ということをお話しました。


今回は引き続いて労働審判の申立書が届いた場合に

絶対に注意しなければならないもう1つのことをお話しします。



労働審判の申立書が届いたら
第1回期日を記載した用紙が同封してあります。



このときに必ず、この第1回期日に、
問題の従業員を担当していた直属の上司、そのほか経営者側の人間が
出席できるかを確認してください。


出席できない場合は
すぐに裁判所に連絡して日を変えてもらう必要があります。


このことは労働審判の制度自体の特徴と関係しています。


労働審判というのは前回もお話したとおり、1回目の期日で勝負がだいたい決まります。


そして、この1回目の期日に
問題の従業員を担当していた直属の上司
あるいは小さな会社であれば社長自身が弁護士と一緒に出席して、
十分な主張をすることが必要なのです。



つまり、第1回の期日は必ず都合をつけて、経営者側の人間が出席する必要があります。



では、どうしても第1回の期日に出席できない場合、
日を変えてくださいとお願いすることはできるのでしょうか?



実はこれがなかなか難しいのが現状です。


労働審判制度というのは、
裁判官のほかに民間人2名が審判員として加わって進められます。


労働審判の申立があると、だいたい1週間くらいの間に、
審判員が選ばれ、裁判所から審判員に

「いついつこの事件の審理をするので 裁判所に来てください」

とお願いが行くことになります。



このように審判員が決まった後、企業側が

「日を変えてください」

と裁判所にお願いしても、
審判員の予定もあるので、応じてくれません。


どうしても日を変えて欲しいという場合、
審判員が選ばれるより前に裁判所に連絡して日を変えてもらう必要があるのです。



労働審判の申立を受けたら、
必ず企業側の人間も第1回に出席しなければならない、
もし、どうしても都合がつかないから日を変えて欲しい
という場合は申立書が届いたら、
すぐに裁判所に連絡しなければならない


ということを覚えておいていただきたいと思います。