総合
別会社を設立する財務面でのメリットとデメリット

 平成18年に施行された会社法で、最低資本金規制が撤廃され、少ない資本での会社設立が可能になりました。

 実際に、この最低資本金の撤廃により、私の周りでも起業して法人を設立する方も増えていますが、その一方で既存の会社とは別に、新たに法人を設立する動きも出てきています。

これにはいくつかの要因が考えられます。

1.ブランディング
 新しい商品やサービスを提供するに当たり、既存の社名やブランドと一線を画したい場合、また既存のマーケットとは別の新たなマーケットを開拓したい場合、新たに法人を設立して、WEBサイトも新規ドメインで運用し、プロモーションなども含めて全て新しい社名を利用して行う方法です。

 また、既存の会社では他人資本を受け入れたくない場合でも、別法人であれば、他社からの資本受け入れを容認するといった方法で利用される場合もあります。

 実際に、私自身も昨年3月にキャッシュフローマネジメント株式会社という別会社を設立しましたが、一番の要因はこのブランド力の面が大きかったです。
 ・「キャッシュフローの専門家」という立ち位置でブランディングを行う
 ・「http://www.cashflow.co.jp/」のドメインを取得して、サイトをオープン
 ・キャッシュフローマネジメント株式会社を設立し、プロモーションを実施

 一方で、新ブランドは、既存ブランドと一線を画すことが多いために、既存ブランドの
認知力を活用しづらいという面もあります。


2.責任の明確化

 社内の一部門でスタートする場合、損益面はもちろん、資金面でも新規事業としての明確な線引きを行わないことが多いです。このため、ずるずると見えない赤字を引きずったまま、その赤字が本業の利益を圧迫することもよく見かけます。
 一方で、別会社を設立した場合、その会社の経理処理が必要になるため、売上はもちろん、経費、利益、資金繰りまでもが明確になり、その会社の経営状況(責任の所在)が明確化されます。

 ただし、既存会社と別会社との連携を社長自身が望んでいるようなケースでも、社内では、お互い別々の会社と位置付ける社風があると、コミュニケーション不足が発生し、セクショナリズムが生まれるケースもありますので、この点は要注意です。
※セクショナリズム…お互いに協力せず、自身や所属する部署や会社の利害に固執してしまい、結果として相乗効果が生まれないこと。


3.税制面のメリットを活用
 別会社を設立した場合、資本金の出資状況によってはグループ法人税制が適用されるケースや、消費税の免税事業者としてのメリットが生かせる場合があります。
 ただし、これまで一般的に認知されてきた設立後2年間は消費税免税事業者というのは、最近の税制改正で制度が改められています。実際に別法人の設立を検討しておられる方は、顧問税理士等の相談してみてください。


 このような別法人の設立ですが、財務面から言いますと、下記の手順を経て、別法人の設立に踏み切る方法が、安全度が高いと言えます。

1.事業部制での運用
 まずは、社内の一事業としてスタートさせます。
 この段階では、資金繰りの面は考慮せず、売上や経費などの管理を行い、事業としての利益がどれぐらい出るのか?また赤字の場合は、どれだけの赤字が計上(先行投資)されるのか?を確認します。
 この段階で、業績改善が見られない場合は、事業を廃止することで対応します。

2.カンパニー制での運用
 事業部制に加えて、資金繰りに関しても責任を持たせる制度としてカンパニー制があります。
 これは、実際にその事業に資本金を与えたかのようにして(新規口座を開設して、資本金に該当する資金を振込み、その口座で資金繰りを行います)、あたかも会社であるかのように運用する方法です。
 実際に、後継者やグループ会社の社長候補になるような人物の経営訓練の場としても使われる手法でもあります。
 こちらも、1と同様、業績改善が見られない場合は、カンパニーを廃止することで対応します。

3.別会社での運用
 上記1、2の段階を経て、事業としての利益も望め、資金繰りについてもある一定のメドがついた段階で初めて、別会社の設立を行います。
 いきなり別会社を設立するのではなく、別会社の設立までにある程度の手順と実績を踏んでいるので、別会社の運営が成功しやすくなります。


また、運用面においては、下記のようなデメリットも存在します。
1.管理コストの増大
 別オフィスや工場を構えたり、社員の雇用に関して、給与計算をはじめとする諸手続きが増えたり、税理士等の顧問料金が発生したり、その他経理面でも2社間(既存会社と新会社)で取引が発生したりと、従来は一つの会社だった場合、生まれなかった手続きやコストが発生します。

2.2社間の取引が多い場合、金融機関からの評価も2社合計となる
 設立した別法人が、既存会社との取引関係が多い場合、金融機関側も1社単独だけの評価ではなく、2社を合算して評価するケースがあります。

3.社員の起業促進の弊害
 最近では、社員の独立・起業にあたって会社が資本金を一定割合支出して、起業支援を行っているケースがあります。これ自体は、独立起業後も、既存会社との円滑な取引関係が見込めるので双方にとってもメリットがあります。
 しかしながら、同時にたくさんの社員が独立・起業を望んだ場合、会社としての生産性の低下が懸念されるのに加えて、資本金として支出するキャッシュが増大してしまい、結果として既存の会社自体の資金繰りを圧迫する恐れがあります。


 ご覧いただいたように、別会社の設立といっても、当然のことですがメリットだけではなく、デメリットも多数存在します。

 皆さんの会社でも、別会社を設立する際は、事前に運用目的や税制をはじめとする法律面の状況を踏まえて、総合的に判断することをおススメします。
コラムニストプロフィール
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森岡 寛(もりおか ひろし)
株式会社M's FACTORY(エムズファクトリー)
大阪・神戸を中心に中小企業向けの財務コンサルティング業務を実施しています。
具体的業務としては、①経理業務の改善アドバイス、②月次財務報告書の提供・報告、③金融機関からの資金調達・返済相談、④資金繰り改善アドバイス、⑤予算設定・管理、⑥管理会計導入、などが挙げられます。また、現在は訪問財務コンサル(関西圏対象)と、ITツールを活用したWEB財務コンサル(全国の中小企業が対象)の2つのサービスを展開しています。